3日目。
どちらかというと眠れぬ夜を過ごし...
唯一の救いは、朝晩はアルファ米と味噌汁なのに、全く飽きずに完食できているということと、昼の行動食もほぼ全て食べ切っているということだ。色々試してみたものの、尾西のアルファ米が一番美味しい。数年ぶりに白米50食箱買いしたので暫くは安泰。
テントを張った三方窪から三方嶺に向かって左側に進むとテープがあり、どうやらこちら側の尾根で登っているらしい。2つくらい向こうの尾根。傾斜も緩い。朝日岳と合流してからは所々に人の痕跡が見られるようになった。
少し登ると視界が開け、なんとも気持ちの良さそうなテンバが数箇所あった。
大井川鐵道看板。なんで大井川鐵道なの?
昭和の名残かな?
→同じルートを30年以上前に歩いたという知り合いクライマーの話によると、どうやら大井川鐵道会社の山岳部がつけた標識らしい。色々感慨深い。
風イラズとかそっち方面を眺めつつ、大無間山から尾盛駅に下りたい気持ちをぐっと堪える。
稜線は気持ちが良く、日中は穏やかな気候だった。
笹と崩落。深南部の稜線は笹であることが多いらしい。今回のルートの笹は丈が短いので朝露がひどい時期でも被害は少なそうだ。黒法師〜不動岳の笹は丈が高くてびしょ濡れだったので、笹の分布も面白いもんだ。
三方嶺。ちゃんとした看板は見つけられなかったけど、展望が最高だった。
たぶんこれが看板。こういうのが残っているのもまた、オツなもの。
身を乗り出すと、こんな感じ。綺麗な崩壊斜面です。うわうわな悲鳴が止まりませんでした!未だに誰にも会いません。恥なんてありません。昨日からずっと悲鳴のなりっぱなしです。
右端の雪がついてるのが光岳だぁ!
テンションだだあがり。あげあげ!!
右手前が大根沢山。
左に行きまして、奥に池口岳から続きます。
はぁ〜深南部の山々しか見えませんねぇ。こんな至福他にあるでしょうか。幸せを全身で噛み締めてこの晴天の深南部の山々を有難く拝みます!
ぼちぼち歩いていたらぽっと凍った水たまりが現れた。幻想的!絶対に三隅池だ!ちなみに、初日に寸又峡温泉から入山する際地元の方に、今日は三隅池あたりまで行くのか?と聞かれた。いや、無理だって14時に寸又峡出てその日のうちにここは、絶対無理だって!笑
でも、大樽沢から大無間で井川に降りるって話したら分かってくれて、今の左岸林道はどうなっているんだろうと気にしていた。昔はどうだったのか、ちゃんと聞けばよかった。
奥に上河内とか聖とかそっち方面。
大無間手前のコル付近で1人会った。彼は、田代から周回のようだ。大根沢山行くのかーいいなーと思ったけど、この時すごい疲れててまともに会話ができなかった。すごい早くに出てきたんだろうなと思うと、お互いお疲れ様って感じ。
ここでようやく大無間山の看板が現れる。
山頂手前のなだらかな尾根に行きつくと辺り一面残雪。まだ朝だったからか踏み抜きもなかったし締まってて歩きやすかった。開けた気持ちのいい場所
大無間山到着!
長かった。いやほんとに長かった。
昨日大樽沢登山口を、一昨日寸又峡温泉を出てからの行程を思い返すだけで、あぁ長かった、と。
歴史を感じる大無間行脚をしっかりと遂行できたことに満足しつつ、しばらく山頂でゆっくりする。
早く歩くことはもちろん大事だけど、山でのゆったりとした時間も楽しみたい。記録を見ると、各所で休憩時間がやけに長い。だから、朝イチで寸又峡温泉を出てたら1泊2日の行程なんだろうなとふと思う。車とタクシーを使えば土日の2日間でやれないことはないルートなんだと思うが、旅は道連れ世は情け。タクシー使ったらその道中の楽しみが減ってしまいかねない。歌って踊って1人コンサートしながら動物との会話を試みたりもしているのだから。
山頂でゆっくりしてたら、1人現れた。山を楽しんでいるふうな人だった。彼は風イラズから入って卯山から接岨峡温泉へ下りるらしい。日帰りでそれって、さすが深南部で会う人だと思った。レモン輪切りにしてティーしてたので、今度マネしたい。
その後男女のペアが上がってきた。すごい!さすが大無間山!めっちゃ人いる(4人)!さすがGW!
電波がわずかに入ったので天気を見てみると、どうやら明日は夜明け前から雨らしい。昼過ぎまで持つと思ったけど、だめかぁ〜もう1泊予定だったけど、小無間山から先もどんな道か全くわからないので、今日中に下りることにした。さて明るいうちに下山は...できないと思うので最後の直線尾根まで間に合うように目指した。
夜明け前の雨音。響きはいいけど嬉しくはない。
いやでもなんか憧れる詩的な感じしない?
白い南ア主脈。この時期の特権だ。
大無間を振り返る。
長いってあの山!
ずーっと向こうの方から来たかと思うと、長いって!大無間とはよくついた名前だ。
さすが深南部の王者!
中無間山の手前で1人会う。彼は田代から日帰りでピストンとのことだった。立ち長話になり、楽しい時間を過ごさせてもらった。楽しい人なんだろうな〜と思った。しかし強いよみんな!!
一期一会かもしれないけど、深南部で会った人ってそんなに多くないからレア。
小無間山。ここまではとても歩きやすい道。
井川って出てきた!
それでは、お楽しみ小無間の崩壊地へ!
そう、青薙山の崩壊地を通過してから崩壊地に興味が湧き出し、鎌薙へも行った。では小無間もゆかねば!という流れなのです。
上から見た図。ザックが重いので崩壊地までの下りがキツかった。
下から見た図。左下にロープが張ってある。劣化したロープはそのままで、何本も足されているので、引っかかりそうだった。確かに落ちたら危ないかもしれないけど、そんなに危機感はなかった。
さてこれまでの3か所の難易度をまとめておこう。
題して!勝手に南アルプス崩壊地ランキング⭐︎
※責任は負いません、知りません、誰向けでもありません、自分の記録です。
じゃらじゃらじゃらじゃら〜第3位は!
おめでとうございます。今回の小無間山です。
入門編ではないでしょうか。
第2位は!
鎌薙です。ボロいアルパインみたいで楽しかった。思っていたより地面が固く、拍子抜けしたが思っていたより安全。
なお、比較対象は次のヤツです。
そして栄えある第1位は!!!
青薙北上です。崩れるというか、崩しながら登った、もう二度と行きたくない場所ナンバーワン。両側とも落ちたらまず復帰は厳しいし、エスケープもできないし水場に戻るのも1日かかるし...今なら何も思わずに通過できるんだろうか?記録は白根南嶺南部編にあります。
小無間山崩壊地の側壁。奥に南アルプス主峰が見えてロケーション抜群。あの岩登るには命懸け。
この後小無間山小屋まで下りるだけだと思っていたら、ピークがいくつかあって全然小屋に着かない。そういえばp1p2p3とか書いてあったな...とアップダウンを繰り返した。流石にもう疲れてきて、コナン爆音で爆発!銃撃戦!バーン!ドッカーン!ババババババ!!!!みたいなシーンで1人に抜かれた。うるさくてすいません。最近流行りのライトパック的な感じの人で、藪ですぐに破いてしまいそうで手をつけていない分野だ。ふくらはぎがすごい太かった。やっぱ深南部って、強い人しかいない。たぶん自分が最弱。毎回思い知らされる。
小無間小屋は中から鍵がかけられていて、窓からしか入れなかった。そういう造りなんだろう。
ここら辺で泊まる予定だったが、まだ時間はあるし雨に降られたくないので下山しきることに。少し先に気持ちの良い広場があったのでそこで荷物のパッキングと食べられるものを食べたりアルファ米に水入れたりした。
小屋の少し先、ロープが張られているところをくぐって南西の尾根に入る。
下山途中、大無間山塊を振り返る。アカヤシオが満開だった。ぽあぽあしていて可愛らしいピンク色。でも足はガタガタだし、暮れ始めてきたし、全然愛でてる余裕はなかった。花見しながらここら辺でテント張りたかった。
「焦りこそ最大のトラップ」陣平ちゃん...
はい、熊よけBGMでコナン聴きすぎです。
やっと卯山に着いた。
この辺りは斜面トラバースする方に踏み跡と軌跡が付いていたが、歩きづらそうだったので基本尾根伝いに進んだ。尾根を歩いてりゃ迷うこともない。
顕著な広い尾根。井川から卯山まではテープが多く、よく踏まれている印象。帰りのバスのドライバーさんに聞いたら、どうやら地元の何かの訓練で使うことがあるらしい。なるほど、さすがクラシックな卯山だ(主観)。
日が暮れ始める。ここの少し先でわかりやすい尾根1本になるので、明るいうちに目標地点までついたことにひとまず安心。写真では切れているけどこの右奥の方に田代のキャンプ場の灯りが見えた。あっち行きたい。キャンプしたいしお風呂入りたい。
最後まで我慢を強いられ、中学校へ下る。
大樽沢から入ることなんてもう無いだろうから、こればかりは妥協できない計画だった。
最後は井川地区の明かりを見ながら下っていく。
やった!あと少しだ!
井川小中学校到着です!
これにて、自分的大無間クラシックルート踏破完了です!幾度の誘惑(登る前に寸又峡温泉入りたい。接岨峡温泉、田代で温泉入りたい。尾盛駅へ行きたい。もっと寝たい。)にも打ち勝ち揺るぎなくクラシックを求め続けた自分を、この日だけは褒めた。
でもごめんなさい、道がよくわからなくて裏から覗いてしまいました。夜にヘッテン付けて歩き回ってるなんて、完全に不審者なのですぐに撤退。
ここに出ました。
さてこの後どうしましょう。とりあえず井川地区を散策することにして、看板にあるビジターセンターに行ったものの、真っ暗で何もなかった。泊まれそうな宿も見当たらない(遅いんだからそりゃそうだ)。
自販機があったので一服することに。
ビールもお風呂も宿もコンビニも売店すら無い現状、最大限のご褒美だった。ご馳走様!
その後はどこで夜を明かそうか、彷徨って迷惑にならなそうな場所を見つけて朝を待った。結局1時間以上は井川散策をしていたようだけど、暗くてよくわからなかった。吊橋や大仏、遊覧船とかもあるようで、改めて井川には遊びに来たいと思う。
お風呂は諦め、近くにあった井川地区を自主運行バスで静岡駅まで帰ることにした。井川小中学校入口バス停から乗車。本当に来るのかなと半信半疑だったし地元の人がいっぱいいたら乗れないから井川駅まで歩こうかとも考えていた。雨の休日。一度バスが行ってしまったので慌てて出てったら戻ってきてくれた。他の乗客は誰もいなかった。木金土の朝イチのバスは割と地元の人が使うらしい。病院に行くのに乗っていくのだそうだ。
コロナの時代になってからこのバスは使っていなかったが、登山者もよく使っているようで、ドライバーさんも山が好きでよく歩いているらしい。良く思ってくれていることがわかって、嬉しかった。また来よ。
着替えだけしてバスを待ってました。持ってきた短パンは寒すぎて履けませんでした。夏が恋しいです。ドライバーさんとは、ずーっと話しながら良い時間を過ごさせてもらいました!
どこで夜を過ごしたのかは聞かないでください。
私のことです。ご想像にお任せします。
横沢でバスの乗り継ぎ。
自販機でジュース買ったら虫がたくさんついていた。自然み溢れる感じがたまらない。
横沢からは路線バスで静岡駅まで直行。
静岡駅の降車場は、駅前じゃなくていつも高島屋の前。雨が降っているのでひとまず高島屋で雨宿りすることにした。
って!!!入ってすぐにコナンプラザ開催の看板が!!!いく!!
てことで10時オープンのコナンプラザに、10時過ぎに入店。先着の缶バッジも見事入手完了。
奇跡なの!?てくらい無駄のない動きだった。
せっかく来たので静岡っぽいものを食べてこう!と思ったけど、気づいたら裏路地の定食屋さんに来ていた。焼きそばが美味しすぎ!この時間に静岡駅にいられることもレアなので、再訪はなかなか難しいかもしれないけど、時間合わせて絶対にまた来たい。心の底から、ごちそうさまでした!
ちなみにお風呂は入れませんでした。お風呂がないんです。そういえばビールも飲んだ記憶がない。
このルートの欠点は、お風呂に入るには、田代か接岨峡温泉方面に行くしかないこと。井川小中学校に下山するという目標は達成したので、次回は大井川鐵道の旅をしながら帰宅したい。
結局予備日1日は使うことなく、山中3日、前後移動含めて4日間で終えることができた。登るか働くかしか脳のない私は、有給休暇は取り下げてもらいGW明けから出社した。平凡な日常に復帰だ。
去年からの数回にわたる深南部通いで、深南部のことが徐々にわかってきた。それはもっと深い部分まで踏み込めるスタートラインに立ったとも考えられる反面、未知なる余白を埋め尽くしていることも意味する。楽しみはとっておきに取っておきたいので、自分的未開の地に足を踏み入れてみたい好奇心にも揺さぶられ始めた。
さて次はどこに行こうか。