2024-08-16

白峰南嶺南部(山伏〜伝付峠)

南アルプスの山脈は間ノ岳で二分され、いわゆる主脈というか主峰が連なるのが塩見〜光の山脈。そちらから見れば富士山の手前のただの藪山に過ぎない景色のひとつかもしれないし、私自身そういう見方しかしていなかった。が、実際に歩いてみるとこれまた充実度のある山脈だった。



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2024/8/13

新田バス停12:00---山伏小屋16:50()


8/14

山伏小屋3:00---青笹山8:40---青薙山12:50---所ノ沢越15:20()


8/15

所ノ沢越2:00---布引山---笊ヶ岳伝付峠10:40---伝付峠入口バス停15:30



さてさて、今回の日程は4日間。七面山から山伏に降りて伝付峠〜塩見という計画をしていたが、なんだか台風が来るらしく突破できるか怪しいので前後をはしょって残ったのが、白峰南嶺の南部というわけだ。

なぜここに行きたかったのかというと、学生の頃から白峰南嶺が気になってはいたが、ずーっと南まで繋がっているようで、せっかくなら(お金なかったから)全部繋げたいなーと思い結局来ていなかった。それが去年北岳バットレスから笹山まで歩いて、その素晴らしい景色に魅了され、伝付峠...という得体の知れない憧れの地名を標識で見て、やはり行きたいと再認識したのだった。

それから1年。ふと思い出して地図を広げてみると、高原地図の表と裏に繋がっていた。小河内なんとかコル以北は藪、っていうのだけ確認して、他はあまり見ずにいざ山へレッツゴー!



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1日目


始発鈍行で静岡駅まで行き、24時間やってる一蘭を食べて、梅ヶ島温泉行きのバスを待ち終点手前の新田(しんでん)で下車した。民家と茶畑を通り抜け山へと向かう。

山伏の登山口。後からよく見てみたら、反対からだと山頂まですごい近い。

ワサビ田がある。昔の痕跡がちらちら見えるところも、なんだか山を歩く中での面白い所だなぁとも感じた。

岩!!登れそう!!

まったりのんびりハイキング。日帰りで降りてくる人5人くらいに会った。今から!?って言われたけど、そうテントで伝付まで!と答えたものの、行けるのか半ば他人ごと

安倍奥は2回目。2回とも視界は白い。安倍奥っていつも白いの?私の時だけ狙ってるの?

分岐まできた。のんびりしてたら雨がぱらついてきて、小屋への下りで急に降ってきて、滝のような雨になり猛ダッシュで小屋へ向かった。表の扉を開けようとしても、開かない。えっえっ?雨すごいんですけどー!ってよく見たら、裏の入り口を使うようにとの張り紙が。もーあめー!!ってなってなんとか小屋内へ。どっしゃぶり。

小屋の中が暗くて何も見えないけど、とりあえず1人いた。少し話してたらどうやら南アルプス大好き青年のようで、なんだか嬉しかった。なお、小屋の中も暗く朝も暗く顔はわからない。笑


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2日目


青年とは小河内の手前まで一緒に行った。登りでついていけなくてそこで別れたけれども、青笹山から降りて深南部に行くとのことだった。私ほんと体力なくない?いや会う人が速すぎる?なんか普通がわからなくなってきた。


とりあえず今日は青薙の崩壊地を雨降る前に越えて水場のある所ノ沢越まで行きたい。なお、前日に青年から青薙の崩壊地のことを聞かされ、情報は最低限がモットーな私にとっては寝耳に水なことだった。ロープがないと...下りなら懸垂下降ができるけど登りだから...そんな状況だからほとんど通る人はいなくなっているとのこと。えっそうなの?笑

しかし私は考えた。無理なら戻ろう。台風と日程的には間に合う。第一、1人で行って崩壊のガレをロープがあっても意味なさそうだし、降りるより登る方がリスクは低そう?と思って突撃した。この時点でどんな場所なのか全くわかっていない。電波が入っても天気予報しか調べなかったのは、無意識のうちにオンサイトの面白みを残したかったからだろうなぁ〜


小河内手前から

日の出!と思ったらガスも出ていて辺り一帯オレンジ色に染まっていた。

雲がどんより低い。天気もってほしいなぁ

うひょー!これはもう優勝!

小河内山山頂の標識。たぶんこの手前のピークじゃない?

青笹山まではこんな感じ。期待していたほどの藪ではなく、ルーファイしながら行けば歩きやすい印象。そのためあまり記憶に残っていない。

所々開けた地点が現れ、聖、茶臼などの南部の山が目の前に見えた。深南部の山々も奥の方に見えたりと、ふーん最高♡

青年はとっくに下に降りてしまったようだ。半端ない体力だなーって山を目の前にして思った。

まずは青笹山。

ガレてるところがあったりしつつ

イタドリ山到着。

ダケカンバが直立して伸びているので雰囲気変わったなぁと思って撮った1枚。


THE!!って感じの風景。
好き!この山域でこの景色も好き!
藪ー!って感じ。で、案の定イタドリ山から青薙の崩壊地までの登りが、頭おかしいのか?ってくらいの急登...じゃなくて急斜面で獣道だらけだった。割とキツかった。
倒木もあったり。

そうこうしているうちに青薙の崩壊地が見えてきた。行ってだめそうなら来た道を戻る。途中で1泊して下山する。水は一応その分まで持ってきている。

崩壊地。地図的にはここを突っ切る。なお、両サイド大きく崩落しているため、エスケープはなさそうだった。ガスが晴れた隙を狙って視察。ロープがたれている。3箇所。その後は藪の中に入れそうなので、恐らくはこの見えている3箇所だろう。3本目がまぁまぁ傾斜がありそうだけど、なんとかなりそうかなーって感じ。登攀用のパッキングに詰め直して、行くと決めたら水を少し捨てて軽くした。

いざ出撃!!

1本目。写真では写ってないけど、左側は地面はなく遥か下まで切れ落ちている。こんなところにヘルメットもなしで行くなんてバカかと思わなくもないだろうが、滑落したらあってもなくても同じだろうから気にしない。ここは木の根っこがしっかりしていたので、腕力に任せて上がった。

2本目はフィックス用に張ってあるだけのレベルだが、足を滑らせたら終わりなので、助かる。そもそも8時間くらい歩き続けた時点でこれなので、気を引き締める。本音は、まじ怖い。

3本目。これを上がれば藪に入れそう。しかしロープなしでは無理そう。なんてゆうか、崩落がひどい。ボロボロ岩が落ちる。このフィックスロープに命を預けることになるのだが、これ大丈夫?思いっきり引っ張ったけど、割としっかりしていそうなので、使うことにした。
写真じゃ分かりにくいけど、左側は大崩壊斜面。右側は沢っぽい地形に繋がってそうでまぁまぁ自力復帰は厳しそう。足元は片足1つ分置ける面積の先がボロボロの壁。絶対に落ちられない。ミスはできない。とりあえず目の前まで行きしゃがむ。片足1つ分の場所もボロボロ崩れる。この際、崩して使える面にした。そこに左足。あと確実に踏みたい場所を崩していく。押し込む方向から崩れなければとりあえずは、いい。ロープを引っ張りプッシュして一気に上まで上がる作戦にした。いや、でも怖い......確か水筒を引っ掛けるのにステビナを1枚持っていたんだ。ザックの後ろに手を伸ばして取った。このカラビナはゲートが手動でしか閉まらないのでステビナにしたのだ。今回はこれが好都合だった。これをザックの腰ベルトとフィックスロープにかけ、万が一落ちた時にロープで止まるようにした。まぁハーネスではないのでザックが切れるだろうが、無いよりはマシかと。これで安心も手に入れ、想定ムーブの確実性は10割の自信があるので、怖いけどその通りにやってみた。想定通りに通過。

上から見ると、こんなん。

写真撮るので精一杯。支点はこんなん。ありがたいフィックスだった。無かったら、100%引き返していたと思う。でも、よく見たらこの木1本だったの!?笑

生きてることの安堵も束の間。登るなぁー

すんごい登るなぁー
青薙の崩壊地を通過する人が少ないからなのか、他の場所よりマーキングがないし、獣道ばっかり。今どんくらいの人が入ってるのかなぁ?

気づいたらズボンが破けていた。自動空調システム発動で、これはこれで涼しくてよろしい!

来たぜ青薙山。二度と来ないと思うぜ。展望あるかと思ったら全くない。

稲又山。この尾根で山頂からの展望とか期待したことがまず間違い。なお、青薙山からはピンクテープが豊富で、歩きやすかった。遠くで雷が聞こえる気がして、急いだ。

所ノ沢越。ここの少し前で道が不明瞭になる箇所があった。

無事に今晩の宿に到着。水場は目の前。水量は少なく、ナルゲンですくうようにして汲んだ。そういえば辺り一面トリカブト畑で、群生地だった。ひとくち含んでみてしばらく様子見。体に異常はなさそうなので食事に使った。結果、大丈夫だった。この日の行程のせいか、自分が臭すぎてほんとに泣けてきたので、そのまま、就寝。


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3日目

台風が心配なので、できれば今日中に家に帰りたい。コースタイムで15時間くらい?1時に出ようとしたけど起きられなくて2時発になった。伝付峠からの下りはまぁ今までの道のりにしたらなんでこたぁないだろう!と思った私はなんて世間を甘くみている!と叱ってやりたい。と下山した今思う。

布引山。登りがまぁまぁキツかった。暗いし登りだし途中で斜面に入ってしまってルートを失い復帰するのに苦労した。ここの登りの正解ファインディングは、ガレのふちを攻めること。だ!と思った。

朝焼け〜

日の出〜!なんだかんだ2日連続で御来光を拝めている奇跡!!

朝焼けを浴びる樹林もなかなか〜!そして、歩きやすい。雨畑の方から笊ヶ岳に行く人がどうやら多いのか、歩きやすい道だった。雲泥の差すぎる!!!

笊ヶ岳山頂!もう1時間予定通りに早く出発していれば、ここでご来光を拝めたなぁ。



笊ヶ岳からの展望!良さすぎる!!

椹島への分岐点。時間的に終バスに間に合いそうかは微妙だけど、椹島へ降りてもバスは使えないから白樺荘まで歩いていくとなると台風的にも時間が微妙。ということで、そのまま北上。伝付峠から降りられることを祈るのみ。実は不安だったり。

こんな道を登り

三角点?を発見し!

北荒川岳みたいな雰囲気の斜面を横切り。ここはピンクテープが出口と入り口にあった。ここの他にも全体的に新めだったので、今年誰かがつけてくれたのかな?

これは、何?

生木割山。アンテナ立ってる!めっちゃ電波強そうー!と思ったけど、圏外だった。だよね。期待ってしないほうがいいよね。

ここの尾根も歩く人が少ないのか、蜘蛛の巣がすごかった。もう私が自然のわたあめ状態。

雰囲気が変わり

昔林道でもあったんか?と思うような幅になり

たまに崩壊斜面もあり。でも普通に歩ける。
伝付峠こっちー!の看板。開けた気持ちのいい原っぱって雰囲気だった。写真はないけど。

伝付峠!念願の峠に到着!
あとはただ下るだけ〜16時ちょいが終バスなので、5時間かかるとしても11時にここを出られればもうお気楽。問題なしーまん。ただ、下の方の橋?とかが何者なのかは知らないけど、ないと困るなぁという、懸念だけはあった。少しのんびりして、11時前に出発。いい感じ〜!台風来る前に家に帰れそう〜

あらくらって読むから。

幸先よろしい道ではないか!

ひたすら、笹。ぶっ飛ばして30分で下の川まで降りた。

橋がある。

ピンクテープがあるから向こうに渡るんだろう。地図を見ると、何度か渡渉するんだよね。

1箇所もっとやばい橋があった。あとは、両サイドで動く橋。なんか1人でシーサーしてるみたいで楽しかった。いや、それは屋根の上についてるやつで、言いたいのはシーソー。

ん?って思ったけど、全部木で作られた橋!意外に丈夫そうだった。

なおこの前後の渡渉で転んでもう足がズタボロだった。
そんな中で現れたのは、怒涛の斜面とロープ。ほんま足がいうこと聞かん。バスに間に合うっていう安堵感もあるんだと思うが、気を張って行きたいところだ。

どこから林道だったのかはよくわからないけど、最後はお決まりの崩落で締めくくり!なお、普通に歩ける。

どうやら通行止めだったらしい。いやそんなん伝付峠に書いてなかったし!でもね、この道を舐めてたのは事実です。雨の中は通りたくないので、やっぱり今日中に下山しておいてよかった。明るい時間に。

下山してバス停で1時間くらい待ち、駅に着いてまた1時間待ち。10年くらい前には無かった、駅裏に温泉施設が!!足湯させてもらって、食事だけした。
足湯気持ち〜

ハンバーグ定食!

電車でビール!1番縛りってこんな美味しかったっけ?思わず、1人で叫んでしまった。

ステビナ。
いやもう君は私のメインパートナー!!!

てなことで、1人でふらっと行った山。会ったのは青年1人だけ。誰も会わなかったな〜。冒険心をくすぐられる、不確定要素満載の楽しい山行となりました(敢えて下調べしてないだけだけど)。
終始斜面がキツすぎてつらたん。だったので、イタドリからの青薙山と、所ノ沢越からの布引山は、二度とやりたくないと、忘れないようにここに書いておく。

でも今やれて、よかった。
そして、台風に迫られて無理やり下山してきたのも、いいスパイスとなった。