2019-10-01

小渋川

破線ルートに冒険心をいつまでも胸に留めておきたい。

ので、今回は文章だけにします。


2019.9.24~26

【南アルプス~小渋川から稜線へ~】

行程

1日目

新宿===松川IC---清流苑16:30=(知人の車)=湯折ゲート18:00---七釜橋18:30


2日目

七釜橋6:25---榛沢7:00---高山沢8:00---キタ沢(水がない?)---福川9:25,10:25---広河原小屋10:30---舟窪13:07,19---大聖寺平14:08,12---荒川小屋14:25,15:15---小赤石の肩16:25---小赤石岳16:40---赤石岳避難小屋17:05


3日目

赤石岳避難小屋6:15---富士見平7:27,40---赤石小屋8:01---椹島10:10,10:30=(東海フォレスト送迎バス)=畑薙第一ダム夏期臨時駐車場11:40=(山で知り合った方の車)=白樺荘で温泉=町田(まで送ってもらう)



荒川小屋にいた頃、それからずっと気になっていた小渋川から続く道。大聖寺平には、銀色の三方向を示すプレートがある。垂れた赤いペンキの文字は、少し気味が悪かった。


5月は大雨で池口岳への入山を1日遅らせている。7月の塩見岳は台風のタイミング。8月は、とある方面から光岳へ行く予定が、大雨で断念。今回も実はそうだった。前日の雨で1日入山を遅らせた。増水した渡渉は、1人では無理だ。

しかし、今の小渋川への雨量は少ないのでは?とずっと考えていた。結果から言うと、正解だった。


山に温泉はつきものだ。松川ICでバスを降り、温泉まで歩く。思わず飯田の先輩に登山口、湯折ゲートまで送って頂けた。国道152号線から歩こうと思っていたもんだから、凄まじく有難かった。ずっと前から知っていた様な、とても良い人だ。


ゲートから七釜橋へ。着いた頃には暗くなった。川原といえば焚き火だということで、負けじと火を起こしてはすぐに消え、細く昇る煙を見ながらその辺りで熟睡。


シュラフカバーとツエルト。寒っ!と目が覚めた。まだ外は暗かった。昔山で食べ過ぎて拒絶反応を起こした因縁のインスタントラーメン。軽量化のために具を持って行かずにカロリー摂取の目的で腹に入れていた、具なし塩ラーメンの気持ち悪さが思い出された。この朝も、泣きながら口に押し込んだ。殆ど吐きそうだった。


やっとのことで鍋を片付け、沢足袋を履き出発。1人で渡渉点を慎重に探しながら行ったり来たりしていると3時間もかかった。


初めと終わりはだだっ広い河原。榛沢~キタ山沢間は、やや細くなっており沢登りのような雰囲気だった。流れも早く膝上までの渡渉があった。歩けるスレスレの水位だった。例年は腰辺りまであり、死亡事故も起きているそう。

ロープを張った方が良いかと迷ったが、一歩踏み入れて弱点を探しつつ突破。私の身長では、正直これ以上の水位だと流される地点が2箇所はあった。他の年では、1人では無事には帰れなかったかもしれない。


水が枯れてくると河原がひらけ、灼熱だった。浮き石だらけで大きな石がとにかく動き、歩きづらい。


モサモサと生い茂った急登の尾根が見える。地図と見比べ、目指すは恐らくその末端。

期待は裏切らなかった。


小屋への入り口がわかりにくい、という記録があったけど、普通に地図通りだった。福川との合流点、最後の渡渉を終えて、1時間ゆっくりした。この後の登りを控えて、なぜここで1時間もボーっとしていたのか。


理由は1つ。焦ると良くない。失敗する時はだいたい心に余裕がない時。生きるか死ぬか、死ぬリスクが極限に低いのであればその時をめいっぱい味わう。そうすることで焦りが表に出る確率は低くなる。結果として余裕のある山行になる、という過去の経験。ということで、余裕のあるフリをしてみた、というわけだ。"なんとかなるさ"、なんて能天気なと思うけれど、それが性に合っている。


大聖寺平までの道は、確かに破線ルートだけど、この類の道にしてはピンクテープが多かった。高巻きのような、下に河原を見ながら高度が上がっていく急登が、心地よかった。しかしよく登った。


ガムシャラに登った。その結果、想定時間よりも早く歩けた。最後は藪を分けて進むと岩肌が見えた。少し登ると南アルプスの南部らしいガレた山肌が現れた。あれが騙されるという、ダマシ平か?と思ったが、騙されることはなく稜線に出た。いや、もしかして騙されなかったことに騙されたのか?


大聖寺平に飛び出て、目指すは今宵の宴会場、赤石岳避難小屋。だが、走れば間に合うかもしれない、13分で荒川小屋へ。中岡さんに会ってカレーを食べてゆっくりした。久しぶりで、懐かしかった。


そういえば赤石って、登るなぁと思い出し、1時間半で着くよと唆されたが結果着かなかった。行けたんだけどな...あれは1時間の休憩で荒川小屋から中岳へ登り、小屋から山頂までを猛ダッシュ往復、中岳避難小屋でコーヒーブレイク&ロシア文学講座受けて、荒川小屋へ10分で戻った、当時の体力&メンタル強制トレーニングの成果だったのかな。またやりたいが...


赤石の小屋が見えた。

何度この小屋に救われたことだろう。

南アルプス全山縦走した時は暴風雨の中通過した。小赤石~赤石の稜線で風を避けながら行動食を食べていた場所も、しっかり覚えている。高山裏避難小屋から百間洞山の家へ向かう途中だった。本当なら暖かいコーヒーでも飲ませてもらいたかったが、ここで寄り道したら気持ちが負けてしまうと思い、寄らなかった。あの時扉を叩いていたら、絶対にあの小屋に泊まっていただろう。


興奮を抑えて山頂からの夕焼けを撮影。

幸せそのものだ。


これまた久しぶりのナナさん。榎田さん。ちえこさんに会うと涙が止まらなかった。夕暮れの百間平方面を見ながら、1人でシミジミしていた。この景色は大事な景色です。

私を救ってくれた赤石人生避難小屋、お世話になりました。


アルファ米に水を入れて食べればいいやとそれしか持って行かなかったが、みんなの山食のきらびやかさには驚いた。おすそ分けしてもらった。

何故シャンパンを飲んだのかは思えてないが、誰かのお祝いだったような...

そして何より、ここに来たら磯自慢。静岡の山といえば磯自慢。日本酒はこれに限ります。


4:30起床、コーンスープにまずいパンを浸して飲み込み、カメラを持って外へ。空が赤くなりかけていた。日の出まで寒さに耐えつつカメラを粘って、そんなこんなでそれからパッキングして、気づけば6時。コースタイムは5時間半?10:30のバスに乗りたい。3時間半で着くよ、と唆されて、これまた着かんかった。

まぁ焦るな、今日も余裕のあるフリをしつつ転げ落ちるように下山。このバスに乗らないと、家に帰れないのだ...


と、無事に椹島に着き、バスの整理券をもらいに中へ。コーラ飲みたいな、と「コーラも!」と言うと、「てかりちゃんだよね?ソフトクリームもね!」と、私のことを覚えてくれていた!!

※昔ソフトクリーム食べたいがために休暇をもらって椹島まで下山したことがあったのです。走って下山する私に外国人は言った。なんでそんなに早いの!?"I want to have a softcream.Only softcreeeeeam!!"大爆笑されたなぁ。


そして、赤石で会った方に白樺荘まで送ってもらえ、温泉に入り、さらに町田まで送ってもらうというご厚意に甘えました。有り難すぎました。来年も山で会おうと約束したけれど、2020年は無理かなぁ...


大聖寺平までは誰にも会わなかった。上では沢山の人に会った。出会った全ての人と、南アルプスの大自然に、感謝感謝。


素敵な2019年秋の、山行でした。

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